住まなくなったマンションを売却し現金化するか、賃貸に出して運用するか、この二つの方法で迷う人も多いはず。
では、どっちが得なのでしょうか。
売却する、あるいは貸す、それぞれにメリットとデメリットはあります。
まずは、立地、築年数など所有する不動産の特性を考えた上で、売るのがいいのか、貸すのがいいのか、大切な資産である不動産を賢く活かすためのヒントと基本的な知識を紹介します。
記事の目次
マンションを売却するメリット
売却すると現金収入が入る
一つ目は売却という選択です。
手放すことによって、維持に費用がかからないばかりか、大きな現金収入が得られます。
ただし、売却するにしても費用はかかります。
売却に伴う仲介手数料や所有権を移転するための登記費用、契約書に貼付する印紙代などです。
また、住宅ローンが残っている場合、完済してから引き渡さなくてはなりません。ローンが残ったままの不動産は、引き渡し時に抵当権を抹消することが必要になります。
売却代金が残債を下回っている場合は、貯蓄等から返済が必要です。
一方で、売却して利益が出た場合、譲渡所得税を払う必要があります。
これには自ら居住する住宅用の不動産であるのとそうでない場合で、大きく税負担が変わってくるため注意が必要です。
いずれにしても、売却すればこれら費用を差し引いた金額が現金として入ってきます。
住み替えや学費、事業資金などさまざまな理由でまとまった資金が必要な場合、売却は一番早い現金化の手段です。
住宅ローンを完済できる
売却することで多くの場合、住宅ローンを完済することが可能です。
住宅ローンを借りていると利息の支払いも発生します。
現在、住宅ローンの返済が重く感じている人は、住宅ローンの完済を目的に不動産を売却するのも一つの方法です。
居住用であれば税制優遇(譲渡所得税の特別控除など)が受けられる
所有する不動産を売却すれば、譲渡所得税を翌年の確定申告によって、納付しなければなりません。
譲渡所得税は、売却で得た利益、つまり売却金額から取得費用や経費を引いた金額にかかる税金ですが、自らが居住していた住宅には特別控除が3000万円分、売却益に対して控除されます。
つまり、居住用の不動産の売却であれば、譲渡所得税は大きく優遇されているというわけです。
詳しくは「マンション売却の税金を徹底解説。使える税制と控除」を参考にしてください。
将来のコスト負担がない
不動産を所有し続ける場合、住宅設備などの補修や修繕、管理費や修繕積立金といった維持コストがかかり続けます。
さらに、固定資産税・都市計画税が、毎年課税されます。
売却によってこれらの維持コストを支払う必要はなくなります。
マンションを売却するデメリットや注意点
売るタイミングで売却価格が変わる
不動産の相場は経済状況によって変動します。
金利の変動も住宅ローンを借りて購入する買主には重要な要素になります。
従って、売却しようとするときはその時の市場環境をよく見極めることが大切です。
不動産会社と相談し、地価の動向や中古マンション価格の動向などを見極め、売り出し価格を決める必要があります。
また、一年を通しての売却のタイミングも重要です。
一般的に繁忙期と言われる春、秋は不動産を売りやすい時期と言われます。
このようにして、価格を決定し売却のタイミングを見計らっても買い手がすぐに現れるとも限りません。
売却しようとしても、時間がかかってしまう場合があるということです。
また、査定価格、売り出し価格も、実際に売れる価格と異なる可能性があります。
そのことを十分に踏まえた上での売却活動が必要になります。
売却には諸費用や税金がかかる
マンションを売りに出してみたものの、売却に必要な諸費用等を差し引いた場合、住宅ローンの残債や、住み替えの資金に足らないというリスクも考えられます。
売却に伴う費用としては、仲介手数料、所有権移転登記にかかる費用、住宅ローン抵当権抹消費用、契約書印紙代があります。
その他、売却益が出れば譲渡所得税も納税しなくてはなりません。
諸費用を差し引いた上で、残る現金を見越して売却を考えることが重要です。
マンションを賃貸に出すメリット
借り手がいれば、毎月家賃収入がある
所有する不動産を賃貸に出すメリットとしては、毎月家賃収入が得られる点にあります。
もちろん、賃料収入は借り手がある場合の話です。
所有する物件の立地、賃貸物件としての競合状況等を見極め、借り手の付きやすい適正な賃料を設定することが何より必要となります。
費用を経費に計上できる
賃貸経営には、もちろん経費がかかります。
ですが、賃貸経営にかかる経費として計上できるため、賃料から差し引いた部分が課税対象となり、節税効果も見込めます。
【減価償却とは】
減価償却資産(建物)の取得にかかった費用(購入費用)を、一定の年月をかけて費用として計上できる税法上の制度です。
減価償却資産とは事業(賃貸業)を行うにあたって取得した資産が、年月を経るに従って、価値を失っていく固定資産のことです。
賃貸経営においては、建物本体に加え、設備も法定耐用年数に応じた年数での減価償却費用が計上できます。
減価償却費用は修理費などほかの経費と比べて、実際の支払いが発生せず費用計上でき収益を圧縮できるため、節税につながります。
減価償却費の算出には、2つの方法があります。
■定額法
毎年決まった額を償却費として計上します。
償却費=取得価額×定額法の償却率
通常、賃貸事業における建物や設備備品に関しては、定額法によって算出されます。
■定率法
年が経過するに従って、償却費が減少する算出法です。
償却費=未償却残高(初年度は取得価額)×定率法の償却率
資産として持ち続けられる
賃貸に出す場合、資産として所有権を持ち続けられるという点がメリットです。
賃料による賃貸経営を長く続けることができたら、子どもたちの世代へ残す相続財産としても、不動産の収益物件は大きな資産となります。
転勤など一時的な転居の場合でも、収入を得られる
転勤などで住む必要がなくなった住宅でも、賃貸に出すことによって賃料収入が見込めます。
通常の賃貸借契約では、貸主の都合で契約を終了させることはできませんが、
期限があらかじめ決められた転勤の場合、定期借家契約であれば、戻ってきた時点でまた居住することも可能となります。
将来、売却して現金化することも可能
家賃収入で賃貸経営を続け、将来大きな現金が必要になった場合、そのまま収益物件として売却も可能です。
賃貸借契約のあるマンションは、オーナーチェンジ物件として一定の市場があり、賃借人が付いたままで売却でき、資金が必要な時に現金化できます。
管理は一括して依頼することも可能
賃貸物件を経営していこうとすれば、管理業務が不可欠です。
主な管理業務には以下のようなものがあります。
・賃貸募集から内覧、契約にかかる業務
・賃料回収業務
・日常清掃、メンテナンス
・入居者対応業務
・トラブル対応業務
これらの仕事が日常的に発生するのが、管理業務です。
しかし、これらを一括して管理会社へ依頼することも可能です。
管理会社へ任せることができれば、その分の費用はかかりますが、所有者(オーナー)として何も業務は発生しません。
今現在の仕事を続けながらも、副次的に収入が得ることも可能です。
総合課税で節税効果も
所得税の課税方法には「総合課税」と「分離課税」の2つがあります。
総合課税とは、事業所得や給与所得などの所得で、合算して合計の所得に対して課税されます。
分離課税とは株式の売却によって得た所得などを合算せず、決められた税率によって課税する方法です。
賃貸収入は総合課税ですから、ほかの所得と合算して課税されます。
しかも経費として挙げられる項目も多く、給与所得等他の所得が多い場合、所得が圧縮され節税効果も大きいのが家賃収入です。
概要 | 税率 | 納税方法 | |
---|---|---|---|
総合課税 | 事業所得、給与所得など1年間の所得を合算 | 税率(累進税率)15%~55%(所得税+住民税) | 申告納付 |
分離課税 | 株式の売却で得た所得など他の所得と合算せず課税 | 税率20%(所得税+住民税)※株式の売却などの場合 | 一部の利子や配当は源泉分離課税で申告不要。その他は申告納付が必要な申告分離課税 |
将来は居住財産として活用も可能
不動産の所有権を持ち続けておけば、将来、自ら居住する住宅としても活用できます。
ただし、一度賃貸物件として貸し出せば、賃借人の退去するタイミングがその時期となります。
日本の法律では、賃貸人(オーナー)の都合のみで、賃貸借契約を終了させることは難しく、将来の居住を見越している場合、定期借家契約にしておくなどの必要があります。
マンションを賃貸に出すデメリット
空き室リスクがある
賃料収入は賃借人があって初めて得ることができる収入です。
空き室であれば、当然賃料としての収入はゼロとなります。
例えば、学校や大きな工場などの就労施設の近く、駅に近く便利な立地などは賃貸マーケットが活発な地域と言えます。
つまり、賃貸に適しているかどうかは立地による影響が大きいと言えます。
また賃料設定が適切でない場合も、空き室リスクが生まれます。
物件の立地が、賃貸マーケットに合っているかどうか、そして、賃料の設定が適切かどうか、賃貸専門の不動産会社によく相談して決めることが大切です。
管理や維持に継続的にコストがかかる
賃貸管理とは、入居者募集から契約業務、共用部の日常清掃から賃料管理、入居者対応、トラブル対応まで。
賃貸経営にかかわるあらゆる業務が含まれます。
そこで、これらを一括して外注することで、業務からは離れることはできますが、月々の管理費用が発生します。
また、入居者の入退去時には、フローリングやクロスといった経年劣化をする部分の補修、修繕費用がかかります。
お部屋の付帯設備として給湯器やエアコンなどの住宅機器は、長年使用すれば新しいものに交換する必要があります。
突然故障して、不意に大きな出費を強いられることもあります。
このように、賃貸物件を管理、維持していくには継続的にかかる経費、予期せぬタイミングでかかる経費など、思いのほかコストがかかってくる場合があります。
固定資産税の負担がある
固定資産税は土地や建物の所有者に毎年課税される、市町村税(東京23区は都税)です。
賃貸に出して家賃収入を得ている場合でも納税義務はその所有者にあり、毎年課税されます。
管理業務や入居者とのトラブルが負担になる
賃貸物件を所有し管理していく上で、多くの方が負担に考えているのが、入居者トラブルなどの対応です。
ゴミ出しなどの生活ルール上の問題から、入居者同士のトラブル、家賃の未納問題など、ご自身で管理していく場合、負担に考えるオーナーが多いのが現状です。
このような面倒な管理業務は、一括して管理会社へ依頼する方法もあります。
賃貸人の都合で解約は難しい
普通賃貸借契約の場合、借地借家法では、借主の権利が大きく保護されています。
そのため、賃借人が契約の意思を持ち続ける限り、オーナーのほうから一方的に退去してもらうことはできません。
オーナーのほうから契約の解除を求めるためには、家賃不払い等の正当な事由のほか、さまざまな条件が求められています。
住宅ローンが残っている場合の対応
住宅ローンは基本的に自らが居住する住宅用の購入資金として貸し出されています。
そのため、金融機関に無断で賃貸に出してしまうのは、契約条件に反することにもなります。
転勤などでやむを得ず賃貸に出す場合など、事前に住宅ローンを取り扱っている金融機関への相談が不可欠です。
金融機関や住宅ローン商品によっては、賃貸に出すその理由によって条件変更なしでローンを継続してもらえる場合もあります。
また、賃貸住宅専用ローンへの借り換えや、条件変更になる場合もあります。
住宅ローン控除は終了する
所得税の住宅の借入金等の特別控除(住宅ローン控除)の要件は「居住の用に供する」ことです。
つまり、賃貸に出すことによって自ら居住することがなくなった住宅のローンは特別控除を受けられなくなるのが原則です。
3000万円特別控除が使えない
賃貸用の不動産は居住用とは認められないため、不動産売却にかかる譲渡所得税には、居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除が適用されません。
マンションを売却する方法
複数の不動産会社に査定を依頼することで、より高く売却できる
売却を考える場合、不動産会社選びがポイントとなります。
複数の不動産会社に査定を依頼し、より高く、より迅速に売却活動を行ってもらえる不動産会社を選びましょう。
そのためには一括査定サイトなどで、多くの不動産会社から情報を得るのが簡単で早い方法です。
査定価格を比較し、信頼できる不動産会社と媒介契約を結ぶ
一括査定サイトを利用し必要な情報を入力すれば、複数社の不動産会社から簡易査定の結果が届きます。
そのなかから、信頼が置けそうと感じた不動産会社を3社ほど選び、詳細査定を依頼しましょう。
簡易査定はあくまで売却したい不動産の基礎情報を基にした机上での査定額です。
市場に出す実際の売却価格は、物件を訪問して行う詳細査定やさまざまな調査により決まります。
その際、価格を重視するのか売却のスピードを重視するのか、といった売主の意向を考慮されます。
このようにして売却を依頼する不動産会社と担当者が決まったら、次は媒介契約を結びます。
媒介契約の種類は以下のとおりです。
■一般媒介契約
複数の不動産会社へ媒介を依頼できる契約です。
契約期間についても取り決めはなく(国土交通省が定める標準媒介契約約款では3カ月以内)、ほかのどの不動産会社との契約があるかを通知する明示型と、他のどの不動産会社と契約したかを通知しない非明示型があります。
■専任媒介契約
1社のみしか契約できない媒介契約です。
売主が自分で探し出した買主とは不動産会社を通さず契約可能です。
契約の期限は3カ月以内で7営業日以内に指定流通機構(レインズ)への登録義務があります。
2週間に一度の頻度で仲介業務の報告義務があります。
■専属専任媒介契約
売買契約は必ず媒介契約をした1社を通さなければなりません。
契約の期限は3カ月以内。
5営業日以内に指定流通機構(レインズ)への登録義務あります。
1週間に一度、仲介業務の報告義務があります。
マンションを賃貸に出す方法
利回りを計算してみる
マンションを賃貸に出して家賃収入を得ようとする場合、賃料収入が適正かどうかを見分ける指標として、投資利回りという計算方法があります。
つまり、マンションの購入資金に対して家賃収入が年間いくらあるのかを計算し、投資金(購入額)に対して収益(家賃)を利回りとして計算する方法です。
■表面利回り
年間家賃収入÷購入額×100=〇%
で計算します。例えば3000万円で購入したマンションを月々12万円の家賃で貸せば
年間144万円の家賃収入となり、
144÷3000×100=4.8%の利回りとなります。これが表面利回りです。
■実質利回り
(年間家賃収入-年間経費)÷(購入額+購入時の諸経費)×100=〇%
実質利回りとは、賃貸経営に際してかかる経費を収入からあらかじめ差し引いた額を投資額に対して求める利回りです。
実際手元に残る現金(キャッシュフロー)を利回り計算します。
この場合の経費とは管理費用、修理費、募集経費、金利等すべての経費を含みます。
賃貸契約の種類を普通借家契約・定期借家契約・サブリースから選ぶ
一般的に普通借家契約で賃貸に貸し出してしまうと、家主の都合では賃貸借契約を終わらせることはできません。
つまり賃借人はずっと住み続けることも可能なわけです。
そこで、住まいを使用しない期間が決まっている場合、転勤などで数年後には戻ってくる予定がある場合などは、賃貸の期間をあらかじめ限定した契約が可能です。 それを定期借家契約といいます。
■普通借家契約
契約の期間の定めがない、あるいは期間の定めがあっても更新可能な契約です。
借主側からの中途解約に関しては、予告期間や即時解約の際に支払う金銭に関して特約で決めることができます。
借主が引き続き住むことを希望している場合、貸主側からの解約や更新の拒絶に関しては、貸主の正当な事由がなければできません。
■定期借家契約
あらかじめ定めた期間で賃貸借契約が終了し、更新のない賃貸借契約です。
契約期間が1年以上の場合、貸主は期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に、期間が終了する旨の通知が必要です。借主と貸主の合意があれば、期間終了後の再契約も可能です。
■サブリース
サブリースとは、貸主が不動産会社と賃貸借契約(マスターリース契約)を締結し、その不動産会社が借主とさらに賃貸借契約を(サブリース契約)を締結して転貸する方法です。会社にもよりますが、借主から支払われる賃料の80%~90%程度が貸主に支払われ、残りの差額分が不動産会社の利益となります。サブリース契約のメリットは、借主からの家賃の集金や契約更新などの賃貸管理業務を不動産会社に任せられることです。また、空室時の賃料保証のあるプランを選ぶことで、空室時でも貸主には一定額が支払われるのもメリットです。契約条件は会社によって異なるため、事前によく確認しましょう。
物件から考える売却?賃貸?
売却に適したマンションとは
・学校や工場、事業所など人の流動性が高く賃貸マーケットが強い立地以外で借り手が現れにくい物件は、売却で処分するほうが適している場合があります。
・長年使用し設備や内装が古くなったマンションは、賃貸に出すにはリフォームに大きなコストがかかります。
売却の場合は、現状を踏まえて価格が決まりますので、リフォームの必要がないと言えます。
・専有面積が広く部屋数の多いマンションは、売却が適している場合が多いです。
賃貸マーケットでは、圧倒的に単身者向けあるいは小家族向けの需要が多く、広いマンションは借主が付きにくいと言われています。
賃貸に適したマンションとは
・学校や大きな会社など入学や転勤などで人が頻繁に出入りする地域では、賃貸マーケットが強く、空き室リスクも少ないと言えます。このような立地のマンションは、賃貸が適していると言えるでしょう。
・給湯器やエアコンなど設備が新しく築年数が浅いマンションは、募集に際してコストがかからず、入居者も集まりやすいと言えます。
・転勤で一時的に住むことができなくなった物件は、賃貸に出すことで活用できます。
家は空き家のままにしておくよりも、人が住み風や湿気が出入りするほうが、劣化が少ないとも言われています。
【実例で考える】マンションの売却と賃貸、どっちがトク?
【実例1】転勤で住まなくなったマンションを借家に
会社員のAさんは郊外のマンションを購入し、家族で暮らしていました。
しかし、新居で暮らし始めて1年もたたないうちに、Aさんは会社から海外転勤を命じられました。
Aさんの勤める会社は商社です。
今回の海外転勤は、海外の支社長への栄転で、Aさんにとっても重要なキャリアになります。
悩みは入居間もない家をどう処分するかです。
海外勤務は前例によれば2年程度、売却してしまっては戻ってきたときにまた家を探さなければなりません。
知り合いの不動産会社に相談すると、定期借家契約で貸すのがいいと言われました。
マンションは、空き家にしておくと傷みが早く、誰かに住んでもらい通風を維持するほうがいい、とのアドバイスもありました。
Aさんはそこで、早速、借家人を募集すると、同じように転勤により、2年間だけ貸してほしいという家族が現れました。
これでAさんは、気に入った間取りのマンションを手放す必要がなくなりました。
住宅ローンは残っていますが、家賃収入がそれを補ってくれるので安心です。
初めて大家さんとなったAさんは管理も地元の不動産会社へ依頼し、安心して海外へ赴任できました。
【実例2】マンションの売却で、施設の入居費用に
Bさんは駅前の古いマンションに長く住んでいました。
10年前に夫を亡くし単身で暮らしていましたが、高齢になったので地方に住む長女が近くの施設に来ないかと言ってくれたのです。
長女の近くに住めればBさんにとっても安心です。
でもマンションをどうするのか、これが悩みです。
25年前に夫と二人で買ったマンションは駅前で便利な上に、ご近所にはお友達もたくさんいます。
この地と縁がなくなるのは寂しく、改装して貸してはどうかと長女に相談しましたが反対されました。
理由は、賃貸で所有していれば、コストもかかる。
将来、住居として使用していない住宅を売却すれば税金も高いというわけです。
なるほどと納得したBさんは、早速不動産会社へ相談を持ち掛けました。
不動産会社の査定によれば、思ったより高額で売れそうだということです。
しかも、現状のままで改装の必要もないということ。
これなら、別に現金を用意することなしに、施設への入居費用が賄えます。
手持ちの現金を減らすことなく、長女の近くの施設へ住み替えができたBさん。
今でも時々、マンション近くのお友達を訪ねるそうです。
【実例3】マンションを賃貸に出し資産として運用
Cさん家族は、郊外のファミリーマンションに暮らしています。
山の手にあるCさんの実家の戸建て住宅は、高齢のご両親だけで暮らしており、Cさんは足が不自由になりかけている両親にサービス付き高齢者住宅への転居を勧めました。
空き家になった実家はCさん自身が家族で引越す予定です。
そうなると、今住むマンションをどう処分するかが悩みです。
売却も考えましたが、不動産会社に相談すると、マンション周辺には大きな企業の工場と事業所があり、ファミリーでの賃貸需要が活発だとのこと。
そこで、Cさんは賃貸として貸し出すことにしました。
築年数もまだ浅いこのマンションは、子どもたちに収益物件の相続資産としても残せそうです。
住宅ローンはすでに完済し、家賃から経費を引いても残りは、大きな収入となります。
いろいろ計算し考えた上、売却するのではなく、大家としてこのマンションを所有し続けることを決断しました。
まとめ
住むこともなくなり、不要になったマンションをどうするか?
売却するのか?それとも賃貸に出して所有し続けるのか?
自分の所有するマンションを、売るのがいいのか賃貸でも借り手がつくのか、立地や築年数、間取りなど物件の特性を理解することも必要です。
マンションを売却するにせよ、賃貸に出すにせよ、それぞれメリットやデメリットがあります。
まずは、そのプロセスや大切な税金の話をよく知り、家族の将来設計に見合った選択をすることが大切です。
基本的な知識を備えたら、あとは専門家である不動産会社へ査定を依頼し、相談しましょう。
売却するとしたら、どれくらいの金額で売れそうなのか。賃貸なら家賃はいくらくらいで貸せそうなのか。
実際に不動産会社の担当者に、建物や立地など、物件を見てもらうことも重要です。
現地での物件調査を基に不動産会社は、査定金額はもちろんのこと物件の市場性などさまざまな情報を提供してくれます。
その情報を基に、貴重な資産であるマンションを賢く活かすために、家族で話し合い、間違いのない選択をしてください。
構成・取材・文/コハマジュンイチ
イラスト/のりメッコ