不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

東京23区 中古マンション売却・相場、価格リスト-この10年、1番高く売れているのは何区

東京23区 マンション売却・相場リスト-この10年、1番高く売れているのは何区

中古マンションの価格は駅からの距離や築年数、広さなどさまざまな要因に左右されるが、どのエリアにあるかによっても取引額に違いが出る。また、同じ物件でも、売るタイミングによって売却額が上下するなど相場も常に変動している。特に東京は国内でも中古マンション市場の変化が激しいエリアだ。そこで、「東京23区の中古マンション」の平均取引額のエリア別ランキングや変動を、国土交通省発表の不動産取引データベースから分析。23区の相場と、主要エリアのここ10年の推移の理由、今後の価格相場について不動産コンサルタントの田中歩さんに聞いた。

平成28年 東京23区の中古マンション取引額ランキング

ブランド力がある区、交通利便性に優れた区が上位にランクイン

中古マンションの価格が高いのはどの区なのか、自分の住んでいる区は23区中どのあたりにランキングされているのかなど、気になるポイントはいろいろあるだろう。平成28年に東京23区で売れた中古マンション(1LDK、2LDK、3LDK)の取引価格(売れたときの価格)の平均を、区別にランキングした下の表を見てみよう。

1位は千代田区で約9219万円。23位の足立区は約2384万円。同じ東京都でも区によって、中古マンションの価格に大きな差があるのが分かる。取引価格の高い上位5区は、千代田区、港区、渋谷区、中央区、目黒区で、いずれも取引価格の平均が5500万円を超えている。

平成28年・東京23区の中古マンションの平均取引額によるランキング

順位 行政区 平均取引価格
1 千代田区 92193182円
2 港区 80443570円
3 渋谷区 71260927円
4 中央区 60901639円
5 目黒区 57410000円
6 新宿区 54412955円
7 品川区 53675157円
8 文京区 52963918円
9 豊島区 51393333円
10 世田谷区 50349462円
11 杉並区 45919283円
12 中野区 44431034円
13 江東区 42600000円
14 大田区 39728997円
15 台東区 39502646円
16 墨田区 35822335円
17 荒川区 35654286円
18 北区 35422222円
19 練馬区 34281532円
20 江戸川区 31598969円
21 板橋区 29993000円
22 葛飾区 27244865円
23 足立区 23836655円
※国土交通省「土地総合情報システム(不動産取引価格情報検索)」をもとに編集部作成。

「取引額が高い区は利便性にも優れている傾向があります。そういった土地の歴史は江戸時代までさかのぼります。かつて千代田区や港区、中央区は大名屋敷や、大名の別荘だった下屋敷が多くありました。こういった都心部に近いエリアから交通利便が整備されてきた背景があり、当然ながら人気が高くなります」(田中さん、以下同)

現在の交通利便を鉄道駅から考察してみると、取引価格への影響が見て取れる。 「例えば千代田区は11.64km2で23区中4番めに狭い区ですが、区内に駅が29駅もあります。同じくらいの面積の荒川区は7駅、いちばん広い大田区が60.42km2で33駅です。レインズの成約データでは平成28年1月~29年6月の全取引で中古マンションの駅までの距離は平均徒歩3.61分。利便性が抜群に良く、取引額が1位というのもうなずける結果です」 取引額上位に入った他の区を見ても、最寄り駅までの距離は港区が平均6.31分、渋谷区が平均5.58分、中央区が4.42分と交通の利便性の良さがうかがえる。

最寄駅までの平均徒歩数

上位5区の人気の理由を解説

では、取引額上位5区が何を理由に人気を集め、中古マンションの価格を押し上げているのかを、区ごとに解説してもらおう。

千代田区

「千代田区は言うまでもなく超都心に位置する区。区内で分譲マンションが多く建っているのは半蔵門~麹町~四谷の東側で、皇居のお膝元という超都心立地です。昔から政財界の要人だけでなく文化人にも人気があり、交通利便性も抜群です。こういった様々な要素が、中古マンションの価格が高い背景です」

港区

「ここも超都心。国道15号線よりも西側のエリアが台地になっており、青山や広尾、六本木は江戸時代に大名の下屋敷が点在するエリアだったこともあり、人気もあります。東麻布から麻布十番、赤羽橋にかけては準工業地帯で、地下鉄南北線ができるまでは交通アクセスが良いとは言えないエリアでしたが、地下鉄南北線、大江戸線が通って便利になりました。マンションも増えて、この20~30年で青山や広尾などとの人気の差が小さくなったことが、港区全体の資産価値を底上げしたといえます」

渋谷区

「東京三大副都心の渋谷、新宿、池袋のなかで、渋谷区が1番上位に入っています。渋谷区内には恵比寿、広尾、千駄ヶ谷、神宮前、代々木といった人気のあるエリアが多いことが、中古マンションの取引価格が高くなっているのでしょう。ただし、渋谷区のなかでも初台や幡ヶ谷、西原など北西部の物件は他のエリアに比べて高くはありません」

中央区

「超都心で交通利便性もよくDINKSに好まれるのが中央区。マンションが多いのは月島や勝ちどきなど勝鬨橋の南側エリアで、銀座、東京駅、日本橋、京橋などのビジネス街へのアクセスがとてもいいのが魅力です」

目黒区

「実は目黒区は超都心でも副都心でもなく、区内の駅数は8と少なく、駅からの平均徒歩も8.1分。決して利便性の高いエリアではありません。にもかかわらず5位にランクインしているのは人気の街の多さ。東急東横線は、祐天寺、学芸大、都立大、自由ヶ丘、中目黒と人気の駅が集中。中目黒はもともとは、住宅街と工場地帯がある下町だったのが、2002年に中目黒ゲートタウンタワーができ、その再開発によって、川沿いの古い町工場をリノベーションしたショップが増えるなど、若い世代を引きつける新たな魅力が生まれたことが人気の背景でしょう」

この10年、東京の不動産価格はどう変わってきたのか? その理由と今後は?

中古マンションの取引額は2012年から上昇を続けている。 「取引価格上昇の大きな要因として考えられるのは住宅ローン金利の低下です。2013年初頭のフラット35の最多貸出金利は2%前後でしたが、2016年には0.85%にまで落ちています」

例えば毎月10万円を35年間で返済する場合、金利2%なら借りられる金額は約3018万円、金利0.85 %なら約3631万円。同じ毎月返済額、同じ返済期間でも買えるマンションの価格は約613万円アップする。つまり、この10年間は金利が下がった分、買える金額が上がったために取引価格が上昇したのだろう。(※2017年9月現在の最多貸出金利は、1.08%)

「金利水準はこれ以上下がらないところまできています。マンションの価格は需要と供給に左右され、需要が供給を上回れば価格は上昇しますが、中古マンションの在庫はまだあります。ですから、今後の取引価格は高い水準での現状維持が続くのではないかと思います」

過去10年間の中古マンション取引額の推移(2016年取引額上位5区)

過去10年間の主なできごと

・2006年7月 日本銀行、ゼロ金利政策を解除
・2007年6月 サブプライム問題表面化
・2008年9月 リーマン・ブラザーズ破綻
・2009年9月 自民党から民主党へ政権交代
・2011年3月 東日本大震災
・2012年12月 第二次安倍内閣発足
・2013年9月 東京オリンピック・パラリンピック開催決定
・2013年10月 消費税率引き上げが閣議決定
・2014年4月 消費税が17年ぶりの税率アップ
・2016年1月 日本銀行、マイナス金利政策の採用を発表

中古マンションの取引価格は、エリアの人気度や交通利便性、住宅ローン金利などによって上下する。ただし、田中さんによれば、足立区では駅からの徒歩分数が増えるごとに取引価格が下がっており、その差は年々開いていっている。この傾向は他の区にもあてはまるのではとのこと。つまり、駅から近い、遠いという物件の条件による選別が、シビアに行われているのだ。「◎◎区は平均取引価格が高い」からといって、その区全体が高いわけではないことに注意。今後、中古マンションの取引額がどうなるかは、何区にあるかだけでなく、人気のエリアにある駅が最寄りなのか、駅からの距離はどうかなども考慮して推測するのがいい。

●お話を伺った人
田中 歩さん

不動産コンサルタント
三菱信託銀行に17年間勤務後、あゆみリアルティーサービス起業。事業用不動産、中古住宅、投資用不動産の売買・活用・運営コンサルティングを中心にビジネス展開。2014年11月、さくら事務所執行役員兼務(~17年5月)。1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本ホームインスペクターズ協会公認ホームインスペクター・理事。

【資料】間取り別 東京23区の中古マンション平均取引額・早見表

マンション価格は間取りによっても違ってくる。1LDK、2LDK、3LDKそれぞれの平均取引価格のランキングをまとめた。

1 LDK 単位:万円
港区 6240
千代田区 5231
渋谷区 4533
中央区 3933
目黒区 3901
品川区 3883
新宿区 3669
文京区 3497
江東区 3400
豊島区 3297
世田谷区 3253
墨田区 3148
中野区 3048
台東区 3040
杉並区 2860
大田区 2788
荒川区 2644
北区 2629
練馬区 2462
江戸川区 2219
板橋区 2140
足立区 2075
葛飾区 1811
2LDK 単位:万円
千代田区 9842
港区 8890
渋谷区 7372
中央区 6171
目黒区 5799
新宿区 5304
品川区 5296
文京区 4963
世田谷区 4892
豊島区 4704
中野区 4239
江東区 4238
杉並区 4129
台東区 3897
大田区 3733
荒川区 3297
墨田区 3265
北区 3217
練馬区 3155
江戸川区 2669
板橋区 2551
葛飾区 2257
足立区 2084
3LDK 単位:万円
千代田区 13293
港区 11071
渋谷区 9567
中央区 7178
新宿区 6855
目黒区 6797
文京区 6492
豊島区 5914
品川区 5846
世田谷区 5622
杉並区 5557
中野区 4688
台東区 4296
大田区 4269
江東区 4001
練馬区 3716
北区 3659
墨田区 3594
荒川区 3299
板橋区 3191
江戸川区 3174
葛飾区 2637
足立区 2398
※平成28年・東京23区の中古マンション(1LDK、2LDK、3LDK)の平均取引額によるランキング。
※国土交通省「土地総合情報システム(不動産取引価格情報検索)」をもとに編集部作成。

国土交通省「土地総合情報システム」

■データ概要(編集部がデータを抜粋)
・期間:2007年~2016年
・平均取引価格:期間内に取り引きされた中古マンションの平均取引価格。対象物件の間取り、広さ、築年数は異なる(平均取引価格の表記は1万円未満四捨五入。現在販売中の価格とは異なる)

●構成・取材・文/田方みき
ページトップへ戻る