中古住宅をリフォームして自分好みの住まいに仕立てたとしても、その家にずっと住み続けるとは限りません。10年も経つと転勤や転職、家族構成の変化などで暮らしぶりが変わり、住み替えを選択する場合もあるはず。その際には住み慣れた家を人に売ったり、貸したりする必要が出てきます。そんなとき、住まいの「売る」、「貸す」が有利にできれば、資金繰りもラクになるでしょう。
自分が買った住まいが売りやすいか貸しやすいか、つまり資産価値が高いかどうかは、さまざまな条件で決まります。売却する場合は不動産会社に売値を査定してもらいますが、まずはその地域の相場を基に立地条件や広さなどから査定され、次にその物件の個別の条件や状態がチェックされます。つまりどんな街のどの場所に建っているかがまず問われ、さらにその家がどんな仕様でどの程度手入れされているかといったことが重要になるのです。
また、貸す場合には売るときとは多少異なるポイントも加味されます。そうしたポイントを知っておけば、物件を選ぶときの参考になるでしょう。
築20年までは建物が古いほど価格は下がる
築年別の価格の推移をみると、築20年までは大きく下落しますが、その後はさほど下がりません。ただし、あくまで平均値なので、実際には物件によって下がり幅が異なります。価格が維持されやすい物件の条件を知っておきましょう。「同じ築年でも価格相場が高い住宅地の物件は価格が下がりにくい傾向があります。住宅地としての人気が高く、売るときにも有利だからです」(東京カンテイ市場調査部上席主任研究員・中山登志朗さん)
築年数別の平均価格を見ると、築20年までは築年数が古くなるほど価格が下がる。築年数の浅い物件ほど資産価値が高いと考えてよいだろう
都心に近いと資産価値は維持されやすい傾向が
都心への近さと正比例して、家賃相場は高くなるのが一般的です。一方で、都心への距離が同じでも価格相場が大きく異なるエリアもあります。その場合、都心に近いわりに価格が安いエリアで買えば、貸すときには高い家賃収入が期待できるので資産価値が高くなるのです。「東京でいえば城南・城西エリアと城東・城北エリアでは、都心への距離が同じなら家賃相場もほぼ同じなので、物件価格が割安な城東・城北が資産価値の上では有利。また湾岸エリアなど元々住宅地でなかったエリアは地価水準が割安なので、物件価格も比較的低く、資産価値が高くなる傾向があります」(中山さん)
駅までの距離が短いほど売るときも貸すときも有利
最寄駅からの徒歩分数が、売りやすさ、貸しやすさにつながります。利便性が高い立地は人気も高いためです。不動産会社が査定の際参考にする不動産流通近代化センターの「査定マニュアル」(以下、査定マニュアル)でも、駅から近い物件は評価が高くなっています。駅からの近さが同じなら、例えば100m2超の4LDKより60m2前後の2LDKのほうが、利便性を重視する共働き世帯などのニーズが高く有利といったケースもあります。
開発を進めている街は将来の価値アップが望めるかも
マンションの資産価値は、その街の発展ぶりにも左右されます。例えば新線や新駅が開業したり、最寄路線が他の路線に相互乗り入れを開始したりといった変化により、交通利便性が飛躍的にアップした場合などは、資産価値が急速に高まることもあるのです。「同様に、駅周辺で複合的な再開発が行われたケースでは、大型商業施設の開業などで生活利便性が大きく改善され、資産価値の向上につながることも少なくないのです」(中山さん)。マンションを選ぶときには、こうした街の発展性もチェックすることで、資産価値の高い物件を手に入れやすくなるでしょう
まわりが静かでニオイがしないなど良好な住環境が価値を保つ
物件の周辺環境も資産価値に影響します。資産価値という面では駅からの近さが重視されますが、あまり近すぎると騒々しい環境となり、子育て世帯などからは敬遠されてしまう場合もあるでしょう。また、工場や道路など音やニオイの発生源、風俗店舗などが近い立地も査定マニュアル上の評価は低くなります。やはり将来にわたって資産価値を維持していくためには、閑静な住宅街というイメージは大きな要素です。
南向き角住戸や最上階は高く査定される傾向が
南向きか北向きか、何階にあるかなど、そのマンションの中での住戸の位置も資産価値に影響します。方位について査定マニュアルでは、南向きや角住戸の評価が高いです(左図)。とはいえ、目の前に建物があって日照が遮られていたり眺望が悪ければ、売りにくかったり、貸しにくかったりする可能性も。南向きでなくても日当たりや眺望が良ければ、購入希望者から高く評価される可能性も十分あるでしょう。
南向き住戸を基準に、東西、北の順にマイナスポイントが大きくなる。角住戸はプラス要素だ。ただし東向きは朝日が、西向きは夕日が差し込み、北向きは価格が安いというメリットも
土地は所有権が高評価、地上権や賃借権は査定ポイントが低い
マンションの土地の権利には、所有権と地上権、賃借権があります。所有権は文字どおり住戸の所有者全員で区分所有しています。地上権、賃借権はともに土地所有者から共同で借りています。地上権の場合は、土地所有者の承諾なく売れるなどの違いがありますが、賃借権とともに査定マニュアルでの評価は所有権に比べて低いです。ただ、土地分の価格が安くなるので、月々の支払いは地代を含めて負担が軽くなるのがメリットです。
日頃の手入れや大規模修繕が資産価値の維持にも影響する
手入れの行き届いたマンションは、住み心地も良く、資産価値も維持されます。マンションではまず、外壁やエントランスなどの共用部分の維持管理がポイント。30年前後の長期にわたる修繕計画を立て、大規模修繕を行っているかどうかが重要。「住戸内についても、壁や床、水まわり設備などがきれいに保たれていれば、査定でプラスに評価されて高く売れる場合も」(三井のリハウス 月島リバーシティ店副店長・高橋充宏さん)。リフォームで室内を快適にしておけば、住み心地がアップするだけでなく、売るときや貸すときに有利になるケースもあるでしょう。
適度な広さ、汎用性のある間取りが売るとき・貸すときに有利
例えば70m2で3LDKといった、標準的な広さや間取りの住戸であれば、ファミリー世帯などに適しており、売りやすく貸しやすいでしょう。「逆に自分仕様にこだわりすぎ、極端に広いワンルームなどにリフォームしてしまうと、後で売ったり貸したりしにくくなることもあるのです」(高橋さん)。将来の住み替えを考えている人は、リフォームする際には考慮しておくといいかもしれません。