修繕の必要な劣化部分は、入居前に直しておかないと後悔する。「築20年以上なら室内配管、一戸建てなら床下や柱などの構造部分、外壁・屋根などの躯体部分などをプロの目でチェック(ホームインスペクション)を実施するといいでしょう」(大久保さん)。ホームインスペクションは一戸あたり5万円程度。専門の会社やリフォーム会社に相談してみよう。
古い物件だからといって高額なリフォームが必要というわけではない。リフォームの目的は大きく2つ。古い設備を取り替えて使い勝手をよくする「交換」。そして、古くなった見た目を綺麗にする「見栄え」。古い物件でも、設備の使い勝手や多少の古さを納得すれば、壊れるまで使って後で交換する選択もある。見栄えにしてもクリーニングで綺麗にする方法もある。
築何年で、どんなリフォームが必要になるのだろう? ここでは、一般的な修繕箇所と費用の目安を紹介しよう。もちろん、物件によって本当に必要かどうかは違ってくるが、中古購入とリフォームの予算を考える際の参考にしてほしい。
表内の金額は、標準的な材料や設備機器を使ってリフォームした場合の目安。黒文字の項目は必要なケースが多いもの。赤文字の項目は、希望されるケースが多い実施推奨のもの。オレンジの合計額は両方を足した場合
上の表はおおまかな修正箇所とその予算。築年数が古いほど、設備の老朽化や、リフォームすることで使い勝手がよくなる箇所が増えるため、予算も大きくなる。また、マンションの場合は、修繕積立金で外壁や駆体内の配管などを計画的に修繕するが、一戸建ては屋根や外壁の修繕も自分で行う必要がある。修繕にかかる費用が大きいので、計画的に積み立てたい。
中古物件はそれぞれの状態によって、必要な修繕が違う。「売主が定期的にメンテナンスやリフォームをしていたり、綺麗に住んでいた物件なら、修繕の必要な箇所は少なくなります。物件見学の際、不動産会社を通してリフォーム履歴を確認するといいでしょう」(大久保さん)。では、次ページではこだわりから生まれる費用の差をチェックしてみよう。
同じ箇所のリフォームでも選ぶ材料や設備の種類、グレードなどによって費用に差が出る。こだわる箇所と必要最低限でいい箇所に内容のメリハリをつけ、費用を調整するのもいい。ここでは箇所別のリフォーム費用の目安を、3段階に分けて紹介しよう。
予算と内容をチェックしよう。
表内の費用は一般的な販売価格(メーカーやタイプによって、金額は異なります)
リフォーム専用のローンは一般の住宅ローンに比べて金利が高い。しかし、中古物件購入と同時にリフォームをすると、住宅ローンでリフォーム分も借りられるケースがある。ただし、物件の担保価値が低い場合や、リフォーム費用が高額の場合、住宅ローン1本にできないことがある。また、他に返済中の借り入れがあって希望金額を借りられないことも。資金計画に不安がある場合は、不動産会社や銀行に相談してみよう。
マンションでは、床や天井の構造によっては配線などに制限が出たり、水回りの位置変更ができない場合がある。また、フローリングは一定以上の遮音等級が要求されるなど、管理規約に規定があるマンションもある。自分が希望するリフォームができるかどうかは、素人にはなかなかわからないもの。依頼するリフォーム会社が決まっているなら、物件を購入する前にリフォーム会社に現地を見てもらうのが望ましい。
リノベーションとは構造のみを活かして、中身を入れ替える大型リフォームのこと(詳細はリノベーション特集を参照)。全てを入れ替えれば間取りも設備もデザインも新築同様になるうえ、注文住宅のように自分のこだわりを形にしたオリジナル空間にできる。一戸建ての場合は構造部分がそのまま活かせるか、マンションなら間取り変更が自由にできるか、事前に確認して物件を選びたい。
費用を抑えたいなら自分でできる部分をセルフリフォームする手も。今はあらかじめノリ付けされたクロスが市販されているし、ふすまや障子の張り替えは昔は各家庭でやっていたことだからコツさえわかれば簡単。ただし、工事には専用の道具が必要だったり、予想以上に時間がかかったり、満足な仕上がりにならなかったり…。「日曜大工」感覚で家族で楽しめる範囲にとどめるのがオススメだ。
中古物件購入の際は劣化部分をチェックし、修繕や使い勝手の改善をどこまでやるか事前に考えよう
構造や間取りによっては配線や水回りの位置変更ができない場合もあるため、物件選びが重要
中古物件購入と同時にリフォームすると、住宅ローンでリフォーム費用も借りられる場合もあるが、条件があるため不動産会社や銀行に相談しよう