入居申し込みを受けたら、信頼して部屋を貸せる人物かを見極めて入居者を決定する。細かい契約条件を調整して不動産会社に契約書を作成してもらい、契約を締結する
入居希望者から申し込みを受けたら、入居者を決定して契約の準備を進める。
入居申し込みから契約・入居までの流れは下記の通り。
申し込みは、仲介会社が用意した書式の書面で受け取るケースが多い。一般的に申込書には、入居希望者や連帯保証人の氏名、住所、電話番号、勤務先、年収などを記入してもらう。申し込みした後に、入居希望者が撤回することもある。複数人の申し込みがある場合などでも、焦らずじっくり確認しよう。
家賃の支払い能力があるか、家賃を滞納したりトラブルを起こすような人柄でないかなどを、次の要素を基に判断する。
入居審査の結果は、不動産会社の担当者に、いつまでに返答したほうがよいか確認する。契約を断る場合には、個人情報取扱の観点から、入居申込書類は速やかに入居申込者へ返却したほうがよい。
不動産会社は、宅地建物取引主任者から入居予定者に向けて重要事項を説明することが義務づけられている。そのため、貸主は契約締結前に必ず、物件に関する情報を不動産会社の担当者にしっかり伝えておく。伝えるべき情報を開示せず、入居後に何らかのトラブルが発生した場合、貸主の責任を問われることがある。
賃貸物件の重要事項は次の事柄を差す。
なお、住宅設備の説明書やインターネット接続マニュアル、マンションの管理規約など、その物件で暮らすのに必要な書類は、入居日までに部屋に用意しておきたい。
貸主は、契約日や家賃発生日、付帯設備についての取り決め、保険の加入、駐車場や駐輪場使用の有無など、契約条件の細かい点を調整して入居者に伝える。後で入居申込者から家賃や敷金、入居日、利用制限などに関しての要望が入ることもある。細かい点まで検討して明確にしておこう。
貸主は条件の調整を終えたら、賃貸借契約書を不動産会社に作成してもらう。契約後のトラブルを防ぐために、契約条件が正確に書面に反映されているのか、貸主自身で確認することが大切。
不動産会社を通さないで賃貸借契約を結ぶ場合は、国土交通省が公表している「賃貸住宅標準契約書 」などを参考に作成するとよいだろう。
賃貸借契約書で定められている一般的な項目は次の通り。
「普通借家契約」「定期借家契約」のいずれか。契約期間は正しいか。更新手続きや更新料の取り決めがあるか
家賃、管理費(共益費)の額と受取方法、受取期日。滞納時の延滞金や延滞利率。家賃改定の取り決めがある場合はその内容
敷金の金額と返還に関する具体的な手続き内容。敷金返還と原状回復費用の精算に関するトラブルが多いので、原状回復に関する取り決めをしっかり確認。基本的には、国土交通省による「原状回復ガイドライン」に沿った内容を記載するが、特約があればしっかり確認
国土交通省が平成24年2月に公表した「賃貸住宅標準契約書」で「貸主及び借り主が暴力団等反社会的勢力ではないこと」などを確約する条項が盛り込まれることになった。これらに反する場合、契約の解除が可能
禁止事項の例としては、ペットの飼育、楽器演奏、石油ストーブの使用、勝手に他人を同居させること、無断で長期不在にすること、危険物の持ち込みなどが挙げられる
入居中の物件の修繕に関する取り決め。一般的に、通常の使用に必要な修繕は貸主が行うが、入居者の故意や過失によって生じた破損は入居者負担となる。これらが明確に記載されているか
貸主から契約解除する場合の条件(例えば家賃滞納、禁止事項違反などがあった場合に解除するなど)
入居者が解約通知すべき期日や具体的な手続き方法
本来は貸主負担であるべきものを、入居者負担とする特約を付ける場合は、入居者への説明と意思確認を慎重に行う必要がある
その他の契約条件がある場合は、特約事項として取り決める。貸主側で個別の要望がある場合は、貸主と入居者で話し合って合意すれば、契約書に記載する。ただし、入居者にとって不当で不利益な特約はトラブルの原因となるので、必ず合意を得た上とすること
賃貸借契約書の内容を確認したら、契約手続きをする。契約締結は基本的に、貸主、入居者(借主)が不動産会社に集まって行う。不動産会社が貸主と入居者との契約書のやり取りを郵送ですることもある。不動産会社に集まって契約締結を行う場合、不動産会社が契約書の内容を読み上げて双方で確認し、署名・捺印を行う。
貸主は入居者から前家賃・礼金・敷金などを受け取り(入居者から直接、あるいは不動産会社経由で貸主の指定口座に振り込まれる場合もある)、前家賃と礼金の領収書、敷金の預り証を発行する。
そして、入居者へ鍵を渡して終了。入居者から鍵の預り証を受け取ることもある。
貸主と入居者は不動産会社に仲介手数料を支払い、領収書を受け取る。
賃貸経営を賢く行うためのノウハウや豆知識、成功のためのコツなどをご紹介いたします。
文/金井直子 監修/中村喜久夫(株)不動産アカデミー